_

Accel Track Club 大西さんに聞く! リレーオーダーの決め方(4x100mR編)

Accel Track Club大西さんに聞く
リレーオーダーの決め方 4x100mR編


コラム著者 大西 正裕 氏

<プロフィール>

■ Accel Track Club代表

■ 1987年12月17日生まれ

■ 千葉・松戸六実高校→順天堂大学→順天堂大学大学院


学生時代から400mに取り組み(自己記録50秒18)
大学院修了後の2012年4月にAccel Track Club(アクセルトラッククラブ)を発足。「夢の続き...」をスローガンに、生涯にわたって目標に挑戦するチームとして活動している。

大西 正裕大西 正裕

世界陸上・インターハイ・全日本中学と、各カテゴリーのビッグゲームが大いに盛り上がり、私達に興奮と感動を届けてくれました。各種目に深い見どころがありますが、大会に彩りを与えているのはチームを代表して行われるリレー種目であることは間違いないでしょう。

リレーは、全中やインターハイなどの競技会では予選から決勝まで勝ち抜かなければなりません。他にも個人種目との兼ね合いなど、複数の考慮すべき要素があります。そのため、どのようにオーダーを決め、トレーニング・コンディショニングを行い、その走りを評価していくかは、非常に複雑で難しく戦略性に富んでいると感じます。今回は、そんなリレー競技の「オーダー」について掘り下げていきます。

4×100mRのオーダーについて

「オーダーの決め方」と言えば、専門書では『2走・3走にエース・準エース、1走にスタートが得意な選手、3走はクレバーな選手を配置すること』のように書かれていることがあります。もちろんこのような選手が揃っていればいいのですが、そうでない場合も少なくありません。

また、個人種目との兼ね合いによっては選手への負担が大きくなってしまい、想定どおりにならないことも多いのではないかと思います。

そこで、いくつかのポイントに分けてどのようにオーダーを組むべきかを考えていきます。

バトンの速度を落とさない!

私がオーダーについて考えるときにまず大事にしているのは、「バトンの速度を落とさない」ことです。

バトンパスは、次走者にバトンを「渡して終わり」ではなく、渡した後もそのまま追いかけられるくらいの勢いで行うこと」が重要です。

MVMV

走力差が少ないメンバーで走順を組める場合にはあまり考える必要はないですが、多くのチームではエースと4番手での走力差はある場合が多いと思います。
また、同じような走力であっても、序盤の加速が得意な選手、後半の速度の低下が少ない選手とレース内容が異なることもあります。

これらを踏まえたうえで大事になってくるのが「バトンの速度を落とさないこと」です。

そのためには、次走者をいかにスムーズに加速させることができるかがポイントになります。
加速の途中にパスを行うことでスムーズな加速を阻害してしまうことがあります。

「バトンを渡して終わり」ではなく、渡した後もそのまま次走者を追いかけられるくらいの勢いでパスを行うことが大切です。

個人種目との兼ね合い

個人種目と兼ね合いながらどのように戦っていくか、ということも大事なポイントです。

フィールド系の選手を起用する場合には、個人の種目練習を考慮すると、真ん中の区間(2走、3走)よりも両端(1走、4走)に起用した方が負担を抑えることができるでしょう。

MVMV

また、ラウンドを勝ち進む可能性が高い選手の場合は、大会当日のリレー前にバトンを合わせることが難しいこともあります。このケースでも、両端に置くことで、バトンミスのリスクを下げることができます。

当日の競技場内の天候、風向き、雰囲気で微調整が必要な場合には、リレーにコミットできる選手を真ん中の走順に配置できると安心できます。

レースを優位に進めたい場合は、1走にエース級で流れをつくる

レースを優位に進めたい場合にポイントになるのが1走です。
2走のエースをどのように気持ちよく加速させることができるかが重要になります。

スタートが速い選手が起用されることが多いですが、個人的には200mも走れる選手の起用もおすすめします。

バトンパスで2走を追いかける展開をつくれますし、1走がどれくらいの速度感でバックストレートに入ってくるかは、2-3走の出来栄え以上にタイムへのインパクトが大きいと考えているからです。

MVMV

ちなみに1走は3走よりもコーナー途中でパスを行うことになるので、インコースを攻められるコーナーワークのスキルも重要です。

1走に準エースを置き1-2走で逃げ切るパターンも、選択肢としてはアリでしょう。

1~3走まではある程度の作り込みが必要ですが、ここができてしまえば4走はその時に最も調子の良い選手を起用することができます。

もらうスキルは渡すよりも状況判断をしなくて良いので、タイムを狙う場合には比較的入れ替えやすく、他種目の選手や新入生を配置するパターンが多いです。

タイムを狙う場合には、「2走→3走の“ホットライン”」を

タイムを狙う場合には、2走にエース、3走に準エースを置くことが多いです。

直線からコーナーに入ってくる方がバトンゾーンの区間タイムが速くなりやすいので、2走が3走をしっかり追いかけてバトンを渡せると全体のタイムが上がる確率が高いように思います。

また、3走は2走を正面にみてスタートを切るため、距離感がつかみにくくオーバーゾーンも起きやすい区間です。

他チームの動きに動揺せずにスタートを切れるように、リレーの経験が多い選手・運動能力が高い選手・冷静に走れる選手を起用します。

この2走⇒3走のホットラインを作ることが、リレーのチーム作りにおいてまず着手すべきことでしょう。

シーズンを通してここを任せ切れると、チームの安定感が増すと考えています。

着順を狙う場合には、アンカーにエース級を置いてチームに安心感を

着順を狙う場合には、アンカーにエースを置くことが多いです。

理想はバトンの速度を落とさないことではありますが、チームに「アンカーにエースがいるから大丈夫だ」という安心感を与えることで、それぞれが個々の走りに集中し高いパフォーマンスを発揮できることが少なくないからです。

特にプレッシャーのかかるレースでは、エースがまだ見ぬ力をみせ大逆転が起きるということも珍しくありません。

MVMV

サブメンバーが自分の役割を果たすことが大切!

何よりも大事なのはメンバーの6人に入ったサブメンバー(補欠)の出来栄えです。

たとえ力の差からメンバー外となったとしても、当日何があるかはわかりません。
ばっちり仕上げていつでも代われる準備をしておくことが重要です。

出番がないかもしれないのに状態を仕上げてスタンバイするのは、モチベーション的に難しいことかもしれません。
しかしながら、だからこそサポートメンバーの士気がチームに与える影響は計り知れず、出場する4人は『選ばれて走る』ことへのプライドをもち、最高のパフォーマンスを発揮することができると考えています。

これができるチームは本当に強いチームだと思います。