教えて!「陸上競技」ってどんなスポーツ?
春から陸上競技を始める新入生や、中学・高校に入って何をするか迷っている人のために、 陸上競技の魅力や、大切なこと、競技を通してどんなことが身に付くか?などの疑問を、現役の陸上部顧問の先生・陸上クラブのコーチに聞いてみました!
お話を聞いた方
■ 関東地方 中学校陸上部顧問 S先生
■ 関東地方 陸上クラブチームコーチ Oコーチ
陸上競技の魅力は、努力の結果が「明確に」「数字で」見えるところ
球技系のスポーツなど、試合に出場できる人数に制限のある場合、一生懸命練習したけれどレギュラーになれず、一度も試合に出られないまま3年間が終わってしまう可能性もありますが、陸上競技ではそんなことはありません。
※人数制限などなく出場できる競技会も多数あります。
「誰もが競技会に出られる」ということは、陸上競技の大きな魅力のひとつです。(競技会によっては出場資格があるものもあります。)
陸上競技は練習をつづけることにより、努力の結果が必ず数字(記録)で自分に返ってきます。他者との比較ではなく、自分の中で練習の成果を確認し、評価することができます。
特に中学生は身体や技術面の変化が大きく、吸収力や表現力も豊かで、練習すればするほど結果につながることも少なくありません。
中学入部当時100m16秒台だった女子生徒が、中学の間で12秒台まで伸びるような例もあります!
自分で目標を立て、達成に向けて努力し、その結果を数字で実感するという、スポーツの醍醐味とも言える面白さを、ぜひ存分に味わっていただければと思います!
陸上競技は「走る種目だけ?」
陸上競技といえば、「練習がつらい」「ひたすら走っているだけ」というイメージをもっている方もいるかもしれません。
もちろん走る種目は短距離から駅伝までさまざまですが、そのほかにも「砲丸投」「やり投」のような「投げる」(投てき)種目や「走高跳」「走幅跳」などの「跳ぶ」(跳躍)種目にもチャレンジできるのも面白いところ。
自分の特技や体格の強みを活かせる種目に取り組むことができます。
また、練習では「走るだけ」ではなく、さまざまな道具を使うなどしてバリエーションを工夫している学校やチームが多くあります。
S先生の中学校では、特に中学1年生の春は鬼ごっこなどの遊びの要素を取り入れたウオームアップを導入し、「楽しい!」という感覚を大切にしているそうです。
またOコーチのチームでは練習のうち半分以上を芝生での身体づくり(ブリッジや手押し車など)の時間にすることで身体の使い方を覚え、結果として「きれいに・かっこよく 走れる」ようになることで記録アップにつなげています。
「個人競技」だからといって一人で頑張るわけではない!
陸上競技は基本的には個人競技ですが、リレーや駅伝はチームの合計タイムで競う種目です。
また、応援や周りでサポートする仲間たちと一緒にチーム一丸となって競技会に臨み、喜びも悔しさも分かち合う姿には、「個人競技」とひとくくりにできない一体感があります。
また、普段から個人の目標だけでなく「チームの目標」を設定し、それに向かって仲間と練習に取り組むこともあるそうです。
記録や結果が出ない時期ももちろんありますが、そんな時に仲間と励ましあったり、指導者や先輩に相談できるのも部活やチームの良さですね。
春から秋にかけてがシーズン。冬は鍛錬期
4月に入学したら、いきなりシーズンインです。
4月から10月頃にかけて、地区予選や通信陸上、新人戦、地区の記録会など、さまざまな競技会が開催されます。
一方で11月から3月の冬場は「鍛錬期」として、基礎体力の向上などを課題として部活・チームの練習に取り組む時期となります。
練習時間は地域や学校・クラブによりさまざまです。先輩や先生に一度聞いてみるのがいいでしょう。
〈S先生の中学校のスケジュール〉
朝練習 30分
午後練習 1時間半~2時間半 (季節による)
土曜日 半日
日曜日 休み
※シーズン中は土曜日大会、日曜休みなど
〈Oコーチのクラブのスケジュール〉
平日・土曜 1時間半(週3~4回)
休日 2~3時間
※学校・クラブによっては、部活動が終わってからクラブに参加する場合もあり
行動力・コミュニケーション能力が身に付き、コミュニティが広がる!
S先生の中学校では、学校のグラウンドだけでなく近隣の陸上競技場・浜辺などさまざまな場所で練習をしているそうです。
また、地区の強化練習や合宿などに参加して、他校の先生や生徒とコミュニケーションをとる機会も多くあります。
そこで出会う他校の先生たちに自分の課題を自ら聞き、それを「おみやげ」として自分の学校での練習に活かす、という大人でも難しいような課題を実践しているのだとか。
Oコーチのチームでは、競技力や技術の向上のために自分の身体の感覚・思い・考えを言葉にして相手にしっかり伝える力を大切にしています。
陸上競技を通して、コミュニケーション能力や社会性を身に付け、人として成長できるチャンスがきっとたくさんあるはず。何より、たくさんの先生や仲間との出会いは一生の財産になると思います。
ちなみに最近は「自分で電車に乗れない」という中学生も多い中、もちろん自分たちだけで電車に乗って行動するそうです!
食事、生活面の意識も大切
部活動やクラブ以外の時間では、食事・睡眠など生活面の意識も大切です。
またケガをしないようにストレッチなどで身体をケアすることや、ケガをしてしまったら整骨院などで治療するなど、自分の身体と向き合いしっかり意識をもって日々を過ごすことも学びます。
保護者の方のサポートも重要なだけに、家族みんなで一緒に取り組める良さもあります。
わからないことや不安なことは、指導者や先輩に質問してみましょう。
陸上をやっている中高生は、競技結果だけでなくさまざまな目標に向かっている
お話を伺った中学校やチームでは、自分やチームの目標をしっかり立てているそうです。その目標は、記録向上や大会出場などの競技成績だけでなく、心も身体も強くなること、ライバルに勝つこと、強い意志をもつことなど多岐に渡ります。
S先生の中学校では、立てた目標を皆の見えるところに掲示して共有したり、競技会のない時期は定期的に「コントロールテスト」を実施するなどして、常に目標をもって取り組める環境づくりを行っているそうです。
「学校の部活」と「クラブチーム」それぞれの良さがある!
陸上競技に取り組むには、学校の「陸上部」に入部するか、「陸上クラブチーム」に入るかの選択をされる方や、「陸上部」と「陸上クラブチーム」どちらにも所属して併用されている方などさまざまです。
「陸上部(部活)」では、学校生活の仲間たちと一緒になって、多くの経験・体験をすることができます。部員の思いやモチベーションもさまざまで、「多様性」の中で友情や上下関係などたくさんのことを学ぶことができるでしょう。
クラブチームも仲間と一緒に取り組むという点は同じですが、特に競技力向上への意識が高いメンバーが集まりやすいです。そのため、方向性の近い仲間たちと切磋琢磨することによる相乗効果は高いといえるでしょう。
部活に入る人、クラブに入る人、どちらも両立する人など、パターンはそれぞれ。
部活やクラブの様子も、地域などによってさまざまです。ぜひ自分に一番合ったスタイルを見つけてください。
これから陸上を始めようと考えている方へのメッセージ
S先生
「陸上部では、競技を通してさまざまな出会いがあり、社会性を学べるのが魅力です。部活をやるかどうかは“自分で”決めること。自分で決めたことを、最後までしっかりやり通せば、必ず結果はついてきます。ぜひ一緒にやってみましょう!」
Oコーチ
「さまざまなスポーツの中で、陸上競技に興味を持ってくれたことを嬉しく思います。記録を出し続けるのは簡単ではなく、99%は苦しい・悔しいことかもしれません。ただ、結果がでたときの1%の喜びは、本当にかけがえのないものです。競技場のスタートラインに立ったときの特別な景色を、ぜひ経験し、感じてほしいと思います」